食料問題
「今日はヒトの肉を食べられる日だ。楽しみだなぁ。」
20XX年この世界は1度食料危機に陥った。
しかし科学力の発展により飢餓に苦しむ事は無くなった。
だがその食事の内容は以前の生活と比べてとても質素なものとなった。
食料は政府が配布している施設に行き支給してもらう。
献立の内容は毎回同じである。
無機質な白いプレートにカロリーブロックとサプリメントにマルチビタミンゼリーそれと月に数回だけ出る合成肉。
正直とても味気ない。
いつもはそんな味気ない食事だが年に1度だけ本物の肉を食べられる日がある。
それが''ヒトの肉''だ。
その肉は死刑囚や植物状態の患者。死人や安楽死を望んだ方の肉を使っている。
死刑囚は基本的に食用となるが多くの場合はドナーカードの様な物に死後食用提供として許可をするかどうかをチェックする欄がありその項目を埋めた者のみ死後食用としてその肉を使用される。
また食用を許可した場合その家族にはある程度の御礼金が入るような仕組みとなっている為最初の頃こそ反対運動も盛んに行われていたが最近ではめっきり減った。
それにヒトの肉は牛や豚と違った旨味がある。
炙ると芳醇な香りがし脂の乗ったクセの無い柔らかな肉は食べた者を虜にする。
反対運動をしていた者も興味本位で1度口にするとその活動を辞めて行く者が大半だった。
だが悲しい事にそんな魅惑の食材を巡った犯罪も多々起こっており問題視されている。
食用に拉致された子供や大人が裏ルートで高額で取引されるなんてことは今や珍しくもない。
(因みに大人よりも子供の肉の方が柔らかくより美味しいと噂されている。なのでより高値で取引されているとか。)
まぁそんな話はさておきだ
今日がそのヒトの肉が食べられる日なのだ。
正直いくらヒトの肉を食べるなんて...などと綺麗事を吐こうが食の楽しみを失った今の私達には何の腹の足しにもならない。
そしてそんな楽しみな日と同時に今日は妻の出産日でもある。
こうめでたい日が重なるととても幸せな人生であるような気がしてくる。
いや事実幸せなのだろう。
産まれてくる子はどんな子なのだろうか?
私は幸せな気分に浸りながら我が子を想像する
そしてどんな味がするんだろうか
先日食べたヒトの肉より美味しいんだろうなぁ
私は幸せな気持ちに浸りながら赤子の味を想像する。
20XX年急激に減った出生率は未だに解明されておらず謎に包まれているらしい。